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2014年2月 1日 (土)

小さいおうち:映画

2014年 日本 136分 

Photo

公式サイト

原作:中島京子「小さいおうち」(文春文庫)
監督:山田洋次/脚本:山田洋次、平松恵美子/プロデューサー:深澤宏、斎藤寛之/撮影:近森眞史/音楽:久石譲/美術:出川三男、須江大輔
出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、林家正蔵、ラサール石井、あき竹城、松金よね子、螢雪次朗、市川福太郎、秋山聡、笹野高史、小林稔侍、夏川結衣 、木村文乃、米倉斉加年

名匠・山田洋次の82作目となる監督作で、第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を映画化。昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキは、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で女中として働き始める。家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹、その妻・時子、2人の5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治という青年が現れ、時子の心が板倉へと傾いていく。それから60数年後、晩年のタキが大学ノートにつづった自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史は、それまで秘められていた真実を知る。時子役に松たか子が扮し、晩年のタキを倍賞千恵子、若き日のタキを「舟を編む」「シャニダールの花」の黒木華が演じる。(映画.comより)

@TOHOシネマズ

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予告を観たことがある人には、ネタばれではない程度の感想です。
しかし印象に残ったシーン、原作との比較を書いていますので、ご注意くださいませ。

原作は読んでいます。

「小さいおうち」原作の読書感想

まず、映画の感想から書きます。

開催されなかった昭和15年の東京オリンピック前夜と、2020年の開催が決まった今を繋げてのメッセージを包んだ、格式の高いメロドラマでした。

着物をまとう姿と帯を締める音、階段を昇る白い足袋の裏・・・時子の仕草、佇まいから漂う密やかなパッション。
タキのマッサージを受ける時子の無邪気な表情と、タキの、ほんのりと高揚する素朴な表情の落差から生まれるねっとりとした空気、時子の足にかすかに残る、打ち身による青痣の健康的な艶かしさ。

山田監督らしくない・・・と言えるほど監督の作品を見ていないのですが(汗)、婉曲な映像でのエロチズムの表現の数々に、松竹大船調の伝統を感じました。馥郁たる伝統です。

ところが時子の放つパッションが、ラブシーンからは伝わらないのです。
ひょっとすると、それは監督の狙いだったのかもしれません。微妙なところです。時子という女性をどう捉えるかで観方が変わるのです。

吉岡さんの板倉は、飛び抜けて男前でもなく、男臭さも感じさせないという点で、リアリティがありました。
あまり男前過ぎたり、有能だったりしたら、夫が警戒するでしょう。
夫が警戒したら、このドラマは成り立たないですから。

時代背景の知識が必要不可欠なストーリーのため、説明セリフが多かったのですが、その役割を平井に集中させ、舞台風というか、昔の映画のような朗々とセリフ廻しで語らせていたので、あまり煩くは感じませんでした。
その代わり、ヒロインの夫という立場でありながら、狂言回し的なスタンスになってしまっていましたけれども。

戦前の風景、空気感、そしてキャストたちの佇まいはさすがでした。

特に、家の中の風景。
ほんの少しでも嘘を感じてしまうと、物語全体に醒めてしまう、とても重要な部分です。
丹念に再現してあるだけでなく、深みを感じました。

建売住宅がボコボコできた高度成長期を経た今の感覚から見ると、「小さい」とは思えないおうちでしたが、あの頃の中流の上クラスの人々が住む家としては、小さかったのでしょうか。
小中先生のおうちの方が素敵に感じました。寒そうだけど。

ここから原作との比較を含む感想になります。
原作未読の方は、少し内容に触れていますので、ご注意ください。

人間関係、人物設定及びエピソードは、かなり整理されていましたが、原作中のセリフを効果的に使っていたこともあって、不足は感じませんでした。

不満ではなく、気になった箇所をいくつか書き留めます。

まず、平井夫婦の過去。

原作では基本設定として最初に書かれているのと、映画の大筋には直接関係ないことだと判断したので、書きます。

時子は以前、酒乱だが男性的魅力のある男性と結婚しており、夫が事故で亡くなった後、前夫との子、恭一を連れて平井とお見合いで再婚したのです。

義理の親子の平井と恭一の関係は、邪魔にしたり、反抗したり、ということはなく、良好というか、淡々としたものでした。タキの自叙伝によれば、ですが。

映画でも、淡々と撮っていました。
恭一のことを可愛がってはいるけれども、何はともあれ仕事第一、家庭のことは全て妻にまかせるという、典型的な昔の父親。

実はこの設定には原作だけの秘密もあるのですが、当然ながら、映画では描かれていません。
しかし、その秘密が必要なようには作られていないので、気にはなりませんでした。

次に時子と板倉の関係。
原作では、はっきりと明かされるのはかなり後ですので、予告を観た時には、ネタばれやん、と思わず突っ込んでしまいました。

一番違うのは目線とラストでしょう。

原作での「小さなおうち」の出来事は、全てタキの一人称で語られていますけれども、映画では、タキが語ってはいますが、もっと俯瞰的に描かれています。
ですので、完全なる一人称だからこそ可能なミスデレクションが、映画では使われていません。

むしろ、原作では秘密とされていることを明かしつつ、進むのです。
それでも原作ラストのミスデレクションは、使おうと思えば使えたでしょう。
しかし、監督は使わなかったのです。

もし使えば、ミステリーティストが濃くなりすぎて、綿々と描いた戦前の風景も、そこに込められた監督の想い、そして監督の想いを託したタキのつぶやきが薄らいでしまっただろうから。

原作を読んで一番印象に残るのは、巻末収録されている、著者と船曳由美氏との対談で語られている、戦前の世界ではなく、ラストに明かされる秘密と残された絵、そこから浮かぶ新たな謎・・・だったのです。

監督が描きたかったのは、意外な結末ではなく、対談で語られた戦前の空気、市井の人々の気持ちであることは、公式サイトの「解説」に書かれています。

以上、原作との違いを長々と書いたのは、その違いこそがこの映画のキモのように感じたからです。

原作には原作の、映画には映画の味わいがありました。

映画では、何がタキを苦しめ、嘆かせていたのか。観た人それぞれの印象に委ねられました。

タキの心の秘密は、永遠に秘密となったのです。

人の想いの複雑さを、トリッキーな設定ではなく、計算された映像の積み重ねで描いた佳作だと思います。

久石さんの音楽も心に残りました。

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コメント

>実はこの設定には原作だけの秘密もあるのですが、当然ながら、映画では描かれていません。
しかし、その秘密が必要なようには作られていないので、気にはなりませんでした。

原作未読なので全く知りませんでしたわ。
映画では、実の親子みたいでしたね。たぶん、実の親子設定なんでしょうね。

Largoさんのレビューを読んだら俄然、原作に興味が湧いてきましたわ。
ありがとうございます^^

くうさん こんにちわ。

>映画では、実の親子みたいでしたね。たぶん、実の親子設定なんでしょうね。
ええ、恐らくそうだと思います。
もし原作の設定を盛り込んだら、観客の視点が拡散したかもしれません。

原作のラストは、恐らく監督の肌に合わなかったのだと思います。
・・・もし、その通り作っていたら、今までにない山田作品になっていたとは思います。
でも、監督は自分の色を貫いたんだなぁ、と。
原作の脚色というものの奥深さをすこーしですが、感じることができました。

ラストが違うので、少しミステリーの要素が入った原作も楽しめると思いますよ。
戦前の風景も味わい深く拝読しました(^^

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