胡桃の部屋 第6話 最終回
原作:向田邦子「隣の女」収録作品(文春文庫)
原作未読です。
結局、「どうしようもなく夫婦」だった忠と綾乃。
忠が綾乃と会っていること、離婚届を出していないことを知っている節子は、そのことには触れずに、もう少し大きな部屋を借りよう、と忠にねだります。
ここで充分じゃないか、という、複雑そうな表情の忠。疲れ果てています。体調も良くなさそうです・・・そのわりには無茶してますが(苦笑)。
乗り気でないのは、綾乃への気持ちもあるでしょうが。
新しい部屋、それは新しい生活を始めなければいけない、ということです。
もう、忠にそんなエネルギーはないし、使いたくない、だからここにいる、みたいな気持ちがあるんじゃないかな、と思いつつ。
しかし、節子の方は愛情、嫉妬など様々なエネルギーに満ち溢れています。
自分が無学だと卑下する言葉の裏には、綾乃、そして三田村家への羨望があり、どこかに、あのような家に住みたい、住むだけのお金も欲しい、という欲があったようにも感じました。
すべてに煮え切らない忠に刃物を向けるものの、ふと我に帰って、煮え切らない、弱い男だから、今ここで自分と一緒にいることを思い出し、今度は自分に刃を向ける節子。
いや、自分に刃を向けるのは違うでしょう、と思わず突っ込み。
衝動的な気持ちだったのかも。しかも忠がそこにいるのだから、助かる確率は高いよね、とちょっといじわるに見てしまいました。
でも、人って追い込まれると、はたからは計算に見えるような行為でも、自分自身でも制御できない行動を起こしたりするので、何ともいえないなぁ、なんてことも。
一方、綾乃の行動を非難する子供たち。
研太郎も複雑だろうなぁ。別れたはずの父と母がラブホで会ってるって。
特に桃子は、家族のために自分のやりたいことを我慢してきたのに、と母を責めます。
どうしてお父さんを連れてこないの。これじゃお母さんが愛人じゃない。
そんな桃子に綾乃は、もう、うちを出て行ってもいい、縛られなくてもいい、と。
「わたしはいらないの?!」
今まで自分が懸命に支えてきた、と思っていたことを全否定されたように感じた桃子。
そこへ忠が倒れた、との知らせが。
原因は脳溢血。今夜が山場だと宣告された意識不明の忠を取り囲む三田村家の女性たちと、節子。
とりあえずお引取りを願う咲良を制し、綾乃は、あたなもいてください、と引き止めます。
忠は一命をとりとめましたが、「そのまま目を醒ますことはなかった。」
そんな忠を粛々と看病する二人の女、綾乃と節子。
幾日か、いや幾十日かたって。
節子は、綾乃に本当は私にいてほしくないんじゃないかと、つっかかります。
静かに視線を忠の方から節子に向ける綾乃。
どんなことを言うのかな、と思ったら。
「思い出を生き甲斐して生きるにはあなたは若すぎる。いつか目をさましたら必ず連絡する。」
納得するしかない節子。去っていこうとした彼女に、忠を連れ戻そうとしたが、承知しなかったことを告げます。
「あなたが苦しむから。一人にできない、と。最後までずるくて、弱い男。」
舐めるように意識のない忠の世話をする綾乃の姿が印象的でした。
そのころ、陽子は。
母の勧める見合い話を断りきれない恋人、桧山に。
「ごめんね、嘘ついて。」
でも、まるごと家族を受け入れてくれる人がいい、と、煮えきらない恋人に
「このマザコン!」
と啖呵を斬って立ち去る陽子。
コーヒーに角砂糖を延々と入れ続けるシーンは陽子の見せ場でした。
でも、綾乃の迫力が半端ないので、その分、弱く感じました。
咲良は。
俺より自分のプライドが大事なんだろう、とごねる夫に、
「ごめんね、おかざりなんて思わしちゃって。」
浮気した時に、プライドなんか捨ててぶつかれば良かった、と。
両親の夫婦のあり方を見て、まだまだ修行が足りない、と思ったようで、復縁を決めました。
なんだかんだ言っても気持ちが残っていたのでしょう。
研太郎は。
意識のない忠に宣言します。
「あんたみたいには絶対ならない。何があっても逃げ出したりしない。家族を守る。」
う・・・ん。2011年の研太郎が見てみたい(汗)。
節子は。
アパートに残された忠の荷物を届けに三田村家を訪れます。
「息子に会いに行ってこようかと。怒られてくる。」
いっぱい怒られてください、と微笑みながら見送る桃子。
その桃子は。
綾乃から、あなたがいてくれて救われた、と言われます。
この言葉で、救われたのは桃子でしょう。
「親は子供の手を離さなきゃいけない。もう、自由になって頂戴。」
お母さんは幸せなのか、と問う桃子に
「幸せよ」と、綾乃。
桃子は心機一転、ショートカットに、そして・・・
半年後。
シリーズ冒頭の咲良と清水の結婚式のシーンと対になる、陽子と桧山の結婚式。
ホテルのホール担当に就職した研太郎が仕切っています。料理人には、研太郎のバイト仲間のガールフレンドが。
咲良一家も仲睦まじく出席。そして満足げな綾乃。
店頭に並んだ桃子の企画した絵本を手に取る、都築。
書いていませんでしたが、都築は妻子とともにやり直しています。
そんな都築と偶然再会した桃子は、父が帰ってきた、とだけ報告しました。ほっとしたような都築。
確かに帰っては、きましたが。
「幸せ」と言った綾乃の気持ちは推察はできても、本当のところはわかりませんでした。
このドラマの核となっていた綾乃の気持ち。感じ方は見ている人によって様々だろうなぁ、とも。
家は、桃子の決断で、借金返済のため、そして忠の治療費のために売却されました。
桃子は、病院のそばに移り住む母とともに暮らすことに。
何も一緒にすまなくても、好きにすればいいのに、という綾乃に、好きなことがまだよくわからない、と桃子。
がらんとした家を掃除し、柱の傷を数え、そして出て行く桃子。
家族、夫婦のあり方には、何が正しくて何が悪い、ということもなく。
家族であっても、核になるのは結局ひとりひとりの人間である、ということ。
離れていても家族は家族、ではあるけれども、象徴であった家がなくなってしまった。
彼女の胡桃の部屋は、都築との別れによって消滅してしまったのでしょか。
見終わった後は、綾乃の存在感でかすんでしまっていましたが、少し時間がたった今は、桃子の内なる空虚さを、じわじわと感じだしています。
だからでしょうか、狂言回し的スタンスではあったけれども、もう少しドキッとさせる部分や寂しい部分・・・失恋を通じてだけでなく、彼女自身が抱える孤独感のようなものを描いても良かったようにも思いました。
何か、いい子すぎて食い足りない感じ。
女性のコワイ部分は全部綾乃に背負わしたのでしょうね。また、竹下さんの綾乃は見応えがありました。
全体を通じて。ストーリーの骨格がしっかりしているので、面白かったです。
あと、もう少し時代考証など含めて、雰囲気が統一されていたら傑作になったかもしれません・・・何かとおしい作品だったと思います。
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