永遠の泉:簡単感想
原作:藤原新也「尾瀬に死す」(「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」(河出文庫)収録)
脚本:金子成人/監督:西谷真一/プロデューサー:後藤高久/音楽:谷口尚久/制作統括:後藤高久、谷口卓敬
出演:寺尾 聰、鈴木 杏、山本耕史、奥貫 薫、田中美佐子、小日向文世、山本 學、鶴田 忍、山崎 一、蟹江一平、中島ひろ子、悠木千帆、浅利陽介、中西美帆、塩野谷正幸、大方斐紗子 ほか
2012年・春、熊本。
弁護士の山内(寺尾 聰)は、妻を殺害した容疑で逮捕された倉本(小日向文世)の国選弁護人を引き受けた。倉本は癌を患い余命4ヶ月の妻・芳子(奥貫 薫)から、「動けるうちにあなたと思い出の地を歩きたい」と懇願され、そんな妻の願いをかなえてやろうと出かけた阿蘇山中で妻を殺したのだった。警察の取り調べに対して、すでに倉本は殺害を自供していたが、山内はその自白に不審を感じる。(公式サイトより)
原作未読です。
公式に書かれた粗筋を読むと事件もののようですが、死と向かい合う人々の、答えの出ない彷徨を描いた映像的な作品でした。
阿蘇の風景が美しかったです。
芳子は最後までハイキングを真っ当できると思っていたのだろうか。ほとんど自殺に近いのでは。
また、倉本も何故、重病人である妻を、救急車も呼べない山登りに連れて行ったのだろうか。覚悟はしていたのだろうか・・・
などなど、リアルに見ると、無粋な疑問が浮かばないわけではないのですが、身寄りのない妻の願いを叶えたい、その一心をファンタジックに描いており、俳優さんたちの力もあって、しみじみと切なく哀しいお話になっていました。
草木の茂らぬ大地から、泉湧く、森のほとりへの道行・・・
芳子の息の根を止めた直接の原因が、悲しかったです。
生き残った人間は、生きていくために、なんらかの許しを求めざるを得ない。
死んでしまった人は何も答えてくれないのだから・・・
山内、倉本。初老の二人が、それぞれの伴侶の死に対してそれなりの諦観というか救いを見出したためか、ラストでは安らかな表情になったのに比べて。
今までは険悪だった山内父娘の間を取り持つ、癒し系だった智之の、鏡に映った厳しい表情が印象に残りました。
順当に見れば、山内の娘、百合と生涯をともにする決意の表れだと思うのですが、何故わざわざ鏡に映った表情を撮ったのでしょう、それが気になったのです。
こういう撮り方は不安を呼び起こす、という法則に基づいているのなら・・・、とか、いらないことを考えちゃいました。
あまり深く考えず、若い二人はこれから山内たちが辿った道を歩んでいくのだ、というふうにしておきます。
それは、百合と智之だけのことではない、と。
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ちょっと腐くさい見方をすると(汗)、結婚することによって苦悩や煩悩の渦巻く下界に降りたったfairyみたいな。(撃沈)
ともかく、山本さんウォッチャーとしては、ノーマルな役どころ、ノーブルなビジュアルと、満足な作品でした(^^;;
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